高橋克彦の浮世絵3部作第2巻。

わたしはどうもこの、主人公の補佐役で出てきて途中で推理をかっさらう、塔馬双太郎というキャラが、出来すぎ感があって好きではないのですが、やっぱりあの、地味でマジメな東北人である津田くんでは贋作事件のような人間心理の裏を読むような推理は難しいのだろうなぁ。

状況証拠を積み上げて仮説を立証していく過程は非常にスリリング。
再読ですが楽しめました。
相変わらず密林が使えないので、日記仕様にて。

密林のサイトはこちら>http://www.amazon.co.jp/dp/4344403770/

償い (幻冬舎文庫) (文庫),矢口 敦子,2003/06

高橋克彦を読んでから、普通の(普通、って……)日本のミステリを読みたくなって書店に行ったら、これを始め矢口敦子作品が平積みされていたので、試しに読んでみた。

とある出来事をきっかけに医師からホームレスになった36歳の男が、流れ着いた東京のベッドタウンで、連続殺人に縁を持ち、警察から事件を探るように頼まれる。

複数起こる事件とその容疑者が、最初に思っていたのといろいろと組み替えられる真相は面白い。
とはいえ、ミステリと言うよりも、人はなぜ生きるか、いかに生きるか、といったテーマを追究しているところに重きがある。
これって、医師がホームレスになる絶望をどこまで読者に共感できるかがポイントにあると思うけれど、これは確かにもっともだ、と思える。
ISBN:4062739542 文庫 アンドリュー・テイラー 講談社 2004/02 ¥820
ISBN:4151200436 文庫 佐藤耕士 早川書房 2007/12/19 ¥693
訳者あとがきのなかに紹介されていた、精神科医でもある著者の言葉がよかったので引用。

われわれおとなは、子どもを恐怖からできるかぎり守ってやらなくてはならない、とわたしは考えています。しかし、子どもといえども、世の中には「恐るべきもの」の数々が存在することを知らなくてはならないとも考えるのです。なぜなら人間は、人間存在の状況につきものの不安とともに生きることを学ばねばならないからであり、これは子どもたちといえども、同様に学ばねばならぬことだからです。


どこかの少年が残酷な犯罪を犯して、彼が残酷なマンガやゲームにのめりこんでいたからといって、他の子どもたちからそれらを取り上げるのはナンセンスだと思うのです。

ISBN:4001140950 単行本 キャサリン・ストー(猪熊 葉子訳) 岩波書店 2001/11 ¥756
ISBN:4759811311 単行本 山本 秀策 化学同人 2007/03 ¥2,100
トリノ五輪前に出版された関連本。フィギュアスケートの歴史をヨーロッパ中世よりひも解き、アメリカと日本の、フィギュアスケートの頂点を目指す子どもたちの生活、そして有名選手について短い紹介、いろいろなフィギュアのテクニックの紹介など、盛りだくさんでした。
確かに、五輪前にこれだけの基礎知識を押さえておくと、試合もより楽しんで観戦できたでしょうね。
ちなみに著者は、国際大会にも何度か出場したことがあり、しばらくプロでも活躍したことのある方。スポーツライターと組んでの執筆だからか、文章も分かりやすくて面白かったです。

ISBN:4166604139 新書 今川 知子 文藝春秋 2004/11 ¥788
たまたま図書館で手に取ったら、わたしの好きな歴史ミステリ。といってもこの主人公が探るのは架空の人物なんだけれど、50年前に死んだ人物について知っている人がそれぞれの立場から情報を言ったり言わなかったり解釈を変えて言ったり。そんな中から主人公は真実を探ろうとするという意味では、充分歴史ミステリ的ツボを押さえてました。
さらに主人公の、離婚の危機に晒されて夫と別居中の女性の性格がまたイイんだ(笑)。
実はこの本は3部作の3作目で、しかも時系列的にはシリーズの一番最初に当たるという、凝ったつくりの話です。なのでこの本から読んでもシリーズの前の話のネタバレにはならないという素晴らしさ。
さっそくシリーズ1,2巻にも手を出そうと思ったのだけれど。これがまた見つからない……。

ISBN:406275326X 文庫 アンドリュー・テイラー 講談社 2006/02/16 ¥1,100
「ザ・ミステリ・コレクション」などと銘打っていますが、アメリカの有名なラブロマンス作家による作品。


これを読んでるってことは、私は死んだってことね―ある晩レオノーラの元に届いた一通のメール。発信者は数日前事故死した美貌の詐欺師メレディス。そこに残されていたのは、自殺したある女性と古い殺人事件へ繋がる謎のメッセージだった。手がかりは、霧が立ちこめる小さな入り江の大学町。無数のアンティークミラーが眠る大学内の館で臨時司書の職に就いたレオノーラは、同じ謎を追う男トーマスと共に危険な探偵稼業に乗りだすが…傑作ロマンティックミステリ。


ロマンスよりもむしろ「大学図書館司書」というところに引っかかって読んでみた。
一応主人公は「学術図書館司書」という肩書きだけれど、思いっきり読者の誤解を招きそう、というより前に翻訳者もアメリカの司書制度を分かってないだろうことが丸見えなのでちょい冷める。
自分の専門分野なのでエラそうに解説してみると、おそらく「学術図書館司書」というのはサブジェクト・ライブラリアンのことだろうと思われる。アメリカのライブラリアンというのは、大学で自分の専門分野(サブジェクト)を修めた上で、修士課程として司書の勉強をした人の資格であり、非常に優秀な人たちなのである。日本で言うところの普通の技術職としての司書はテクニカル・ライブラリアンであってこの資格は専門学校でも取れるらしい。
だから、主人公のレオノーラが真面目でお堅い人物とされているのは、修士様だからなのである。

とはいえ、その司書の知識をミステリの解決に活かしているかというとまったく関係なく話は進むのでちょっと肩透かし。
でも、ロマンティックミステリとしては、ちゃんと最後にどんでん返しもあり(ちょっと強引だったとはいえ、あの人が出てくるとは思いませんでした)、がんばってる方ではないかと。

出てくる妙齢の男女みんながみんな誰かしらとカップルになっちゃうのはどうかと思うけど。

それにしても、前にも別の作家の話で家の改築好きヒーローが出てきていたし、これはアメリカの女性が相手に求める要素のひとつなのかしら? そりゃダンナがタダで(しかも喜んで)家をステキにリフォームしてくれたら女性としてはうれしいよな(苦笑)。

ISBN:4576051938 文庫 ジェイン・アン・クレンツ 西 和美 二見書房 2005/12 ¥870
先日「百万ドルをとり返せ!」を発掘した際に一緒に出てきたスパイ小説。
コン・ゲーム小説を探っているうちに「竜の眠り」流れで国際謀略小説もいくつかヒットして、その流れでこのスパイ小説が出てきたので読んでみた。

いや〜!!! 面白いです。最後のどんでん返しがホントに意表を突いていて驚きです。

とはいえ、これも古い話で、冷戦時代が記憶にある人でないと楽しめないかもしれないですね。

ISBN:4102165010 文庫 フリーマントル、稲葉 明雄 新潮社 1979/04 ¥620
コンゲームを読む週間第4弾くらい。
コンゲームと言えば、必ず名前の挙がる超有名小説を読んだ。
姉が結婚前にアーチャーにはまっていたことを思い出し、ウチのロフトの本棚を漁っていたら出てきたので。

大物詐欺師で富豪のハーヴェイ・メトカーフの策略により、北海油田の幽霊会社の株を買わされ、合計百万ドルを巻き上げられて無一文になった四人の男たち。天才的数学教授を中心に医者、画商、貴族が専門を生かしたプランを持ち寄り、頭脳の限りを尽くして展開する絶妙華麗、痛快無比の奪回作戦。新機軸のエンターテインメントとして話題を呼ぶ”コン・ゲーム小説”の傑作。


「摩天楼の身代金」と同様の比較をすれば、全体で341ページのうち、主人公たちが騙された、と分かり、そのうちの1人が反撃に出るのが80ページ辺り。少々長いかなぁ。
でも、そこを過ぎれば4人が順番に悪者を騙して懲らしめるのだけれど、悪者は金持ちなので騙されたと言っても騙されたことに気づくわけではなく、読者は「ばれるかも」とハラハラしながら楽しく読み勧められる。
さらに先が気になる仕掛けは、4人のうち1人が、自分の損を取り返すためのプランをなかなか思いつけないところ。そのせいで、彼は仲間からも軽く見られてしまう。読者としては、どういうすごいプランを考えて最後に悪者をこてんぱんにやっつけてしまうんだろう?と楽しみに読み進むことができる。

もっとも「そりゃゼッタイ普通ならばれてるって」というところも何箇所かあるけれど、嫌な気持ちにならずに読み終えられる、楽しい1冊でした。

ISBN:4102161015 文庫 ジェフリー・アーチャー(永井 淳) 新潮社 1977/08 ¥660
コンゲーム小説を読もう週間第3弾くらい。

「世界でもっとも安全」な超高級マンションがニューヨークにオープンした。青年トニオは、周到な準備と大胆な発想でこのビルを”人質”にし、警備側の誰一人として予想もしていなかった要求をつきつける。さらに、脅迫した400万ドルの受け取り方法についても、まったく新しいアイデアを編み出した。異色でハードな最高の襲撃小説!(文庫裏書より)


グレート! マーベラス!!

細かいところまでよく練られている”襲撃”小説でした。
犯人の、大金を必要とする動機もコンパクトに説得力ある描写で納得させられる(400ページ中最初の36ページ目で!)けれども、彼がいかに自分が捕まらないように大金をせしめようとしているのかはまったく説明がないまま、彼の行動を一つ一つ読まされていくので、非常にシンプルかつ力強い骨格となっています。
そこへ、犯人の青年と偶然拾ってしまった少女との交流――青年の完璧な計画が、この少女のせいで破綻してしまうのではないか、という緊張感――という肉付けと、脅迫されているマンション+ホテルの支配人の、人間的な悩みとか個性的なその周囲の人びとの様子が肉付けとなって厚みを増しています。

とはいえ読者は青年が(例え計画の途中で人を殺したとしても)大金をせしめるのに成功して欲しいと思っているので、最後のどんでん返しは本当に意外。そして本当の最後の最後はしっかり満足して本を置くことができます。

いや〜気持ちのいいエンタテインメントでした。

やっぱりね。動機付けが大事だと思うのですよ。
今回は犯人視点だったけれど、たとえこれが警察側の視点だったとしても、犯人の動機が読者の納得できるものでないと、コンゲームの駆け引きの緊張感がなくなってしまう。

そして、えーっと、この本の犯人、双子の弟のこと好きすぎ(笑)。

ISBN:4167275074 文庫 リチャード・ジェサップ(訳・平尾 圭吾) 文芸春秋 1983/01 ¥571
今さらながらに、1995年発表の国際謀略小説を読んだ。
高村薫や五條瑛を読む人は必ずといっていいほど通っているはずの服部真澄を、実はエッセイ「骨董市で家を買う」以外読んでいなかった。

いや、もっと重苦しい話かと思ったら、存外読みやすいので驚いた。どいつもこいつも密約の内容を思わせぶりにはっきり言わないところとか、あと読点の多いところとかはこなれていない感があるけれど、ストーリーテリングはすごい。

でもやはり12年前の作品。当時は中国の隆盛は望ましいものであったけれど、現在は、公害問題や環境破壊とか、世界的なエネルギーの流通の変動と価格の高騰とか、中国(の市場)に対する印象はがらりと変わってしまった。コンピュータ周りの技術の描写についても、現代を描いた小説の古びるスピードは速すぎる……。

ISBN:4101341311 文庫 服部 真澄 新潮社 2001/01 ¥900
コンゲームもの第2段。
織田雄二主演で映画になっていたのが記憶にあったので、主人公はすっかり織田顔に。
いろんな立場の人が入り乱れ、状況が二転三転してすごく上手くできているのに、なんだか全体は淡々とした印象なのはなぜだろう?
なんとなく、そこにコンゲームもの最大のツボがあるような気がする。

ISBN:4043582013 文庫 井上 尚登 角川書店 2001/05 ¥720
密偵ファルコシリーズ最新刊。
出ていることに気づかずに、たまたま帰りの通勤電車で読む本を探しに書店に入って、面白そうなマンガ文庫を物色したもののめぼしいものを見つけられず、何気なく足を向けた翻訳もの文庫コーナーに平積みされていて、家に帰れば読む本が積み上がっているのに速攻買い求めて読み始めました。

今回もファルコ節炸裂。ハメられ、頼られて圧倒的に不利な裁判の弁護を頼まれ、夜陰に紛れてボコボコにされるわ、思わぬ勘違いから大借金を背負うハメに陥るは。
でもちゃんと最後には一矢報いるし、最後の最後には思わせぶりな終わり方をするし、すかっとしますな。

今回はページ数の関係か訳者あとがきがなかったのですが、この巻のようにローマの相続制度とか裁判制度とかが話に大きく関わってくるものにこそ、解説を入れてほしかったです。

ISBN:4334761836 文庫 リンゼイ・デイヴィス 光文社 2007/11/08 ¥760
古美術業界を舞台にした、古美術商相手に贋作を仕掛ける「目利き殺し」をテーマにしたミステリ。

最近コンゲームに関心があって読んでみた。
古美術業界の薀蓄が詰め込まれていて、とある殺人事件の解決にも「一般には知られていない古美術業界の常識」がヒントになっていたりしておもしろい。

でも、ライトノベルじゃないからか登場人物たちの見た目の描写はほとんどなくて、重要な登場人物である、主人公に「目利き殺し」をそそのかす人物の見た目も年齢も描写がないので、てっきりおじいさんだとばかり思って読んでいた。
実は若いハンサムだったらしい……。

なかなか本筋に入らないなぁ、登場人物の描写が薄いなぁと思いつつ読んでいたらいつの間にか500ページの文庫の半分まで進んでいた。最初のつかみが重要なのは、やっぱりライトノベルの特性なのかしら?

ISBN:4062648547 文庫 北森 鴻 講談社 2000/05 ¥780
仕事シゴト。

ISBN:4004304164 新書 村井 純 岩波書店 1995/12 ¥735
相変わらず家を買う予定はないのにインテリア本は買ってしまう……。
でも、ことキッチンの収納に関しては、これよりも先日読んだ「料理上手の台所」のほうが実践的であるように思う。
http://diarynote.jp/d/20675/20071004.html

ISBN:4777804259 大型本 本多 弘美 辰巳出版 2007/09/28 ¥924
「時の彼方の恋人」で、サンドラ・ブラウンとともにわたしをロマンス小説にハメた張本人ジュード・デヴローの翻訳本が知らない間に出ていたよ! 何気なく書店で見つけてうれしいよりショックが大きかった(笑)。

とはいえ、当たりはずれが大きい(というか、……「時の彼方の〜」以外は外れっぽい?)ジュードですが、これも、面白いところもあるものの最後は「う〜ん」と唸ってしまったなぁ、あまりにご都合主義で。
とはいえ、部分的には面白いところがなきにしもあらず、だからどうにも評価ができない。大金持ちのお嬢様で甘やかされて育ったヒロインが、初めどうしても好きになれないのだけれど、途中で彼女の余人にない得意分野を発揮するところは気分がいい。
ヒーローは、西部の農民のはずなのにどうやら最近農業を始めたらしくて農作業が下手っぴ。そこはとても好感が持てるのだけれど、ヒロインに過去を打ち明けられない理由がそ れ で す か ?
そりゃないだろう……。と一気に冷める。
が、このヒロインの7人いる完璧で末っ子をこよなく愛している兄たちのうちの長兄のキャラが非常に立っていて(というか立ちすぎていて)、その登場シーンはなにかもう素晴らしいの一言。コメディ映画を観ているような気にさえなる。
でも、あまりにキャラが立ちすぎているのでヒーローがかすんでしまうという欠点もあったりして。
ううーん。ホント悩ましい。

ISBN:4789729850 文庫 高橋 佳奈子 ヴィレッジブックス 2006/10 ¥798
日本で有数の(というか無二の?)社史研究家である著者が、様々な企業の創業者や中興の祖の「決断のとき」を書いた連載をまとめたもの。
社史の一番おもしろいところをダイジェストにした、という感じ。もしくは「字で読むプロジェクトX」。
つまり非常におもしろいということだ。一話ずつは短いので、通勤途中に少しずつ読み進めるのにちょうどいい。

ISBN:4532194172 文庫 村橋 勝子 日本経済新聞出版社 2007/10 ¥700

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