猫が見ていた
2018年5月18日 読書記録第6紀(13.08~)猫を飼うふりを続けていた男の謎。同じマンションの住人の猫を密かに飼う女…現代を代表する人気作家たちが猫への愛をこめて書き下ろす猫の小説、全7編。猫好き必読です。
巻末には「猫小説オールタイム・ベスト」紹介も。
【収録作品】
「マロンの話」湊かなえ
「エア・キャット」有栖川有栖
「泣く猫」柚月裕子
「『100万回生きたねこ』は絶望の書か」北村薫
「凶暴な気分」井上荒野
「黒い白猫」東山彰良
「三べんまわってニャンと鳴く」加納朋子
「猫と本を巡る旅 オールタイム猫小説傑作選」澤田瞳子
https://www.amazon.co.jp/dp/4167908905/
作者名を見て勝手に猫ミステリーアンソロジーだと思い込んでいましたが、だいぶ広義のミステリー、かなぁ、という感じの短編集でした。
ラノベ作家による短編集よりは、さすがの一般向け小説の人気作家を集めているだけあって、どれもそつなく仕上げてきている印象。
でも、こちらも文芸誌の特集に合わせて原稿を集めたものらしく、この1本、と思える(私にとっての)佳作はなかった。(失礼)
冒頭の湊かなえ以外は”猫が人間語を話さない”、私にとっての猫小説試金石をクリアしているにも関わらず、である。つまり、猫視点でない猫小説(短編)はいかに書くのが難しいか、ということだろうと思う。
(ちなみに、湊かなえの作品も猫目線とはいえ、自分の親猫が野良から家ネコになるまでを語っている語り手であるので、人間語を話していることがあまり気にならない)
有栖川有栖は、自分のシリーズ作品の1作品、という位置づけで書いていて、上手いやり方だなぁと思った。短い原稿の中で、既存の設定を使うことで世界観やキャラクターの説明を省いている。
そつなく書かれている、という印象はいっぽうで”猫愛あふれすぎ(独立した小説としてはいかがなものか)”な作品はあまり多くなかったと思う。
その中で、湊かなえは、おそらく作家自身を客観視して作品にしているエッセー風でもあって、自分の飼っている猫の話かしら?と思わせる。
加納朋子は、猫が出てくるソーシャルゲームをきっかけに親との関係を見直す話で、生身の猫は一瞬しか出てこないけれど、ゲーム内の猫の描写から、猫が好きなんだろうと思わせる。
北村薫は、以前新聞のエッセーで飼い猫のことを書いていたかインタビューを受けていたか、猫好きだったと記憶しているけれど、この短編は「吾輩は猫である」をきっかけにした人の心の描写だったので、あまり猫愛は感じられなかった。
あまり「猫大好き~」だけの話も好きではないけれど、猫が風景にとどまっているものも、猫をテーマにしたアンソロジーとしては物足りない。むー。
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