従軍取材で疲弊しきったドーソン・スコット。名付け親ゲイリーの依頼で、40年間姿をくらましている過激派ウィンガートを探すため、彼の息子と思われる男、ジェレミーを追う。ドーソンはジェレミーの元妻アメリアに接近、彼女とその息子たちに惹かれるも、心に傷を負うドーソンには立ちはだかるものが多すぎた。そんななか、身辺に起きた不可解な出来事は、殺人事件に発展し…。サスペンスの女王の真骨頂!


先日ひさびさに読んだサンドラ・ブラウンが面白かったので、ちょっと古い(邦訳2014年刊)こちらを手に取ってみました。
ロマンス小説なので基本は善男善女が出会って恋に落ちて障害を乗り越えてハッピーエンドという大筋は変わらないはずで、出会うきっかけや乗り越える障害しか物語のバリエーションがつけられない。ゆえに、長く多作な作家ほど、このバリエーション部分が複雑になっていくのは仕方がないとして、上のあらすじではどんな話なのだか見当がつかず、サンドラ作でなければ手に取らなかっただろうと思います。

実際読んでみて、短い文字数にまとめるなら上のあらすじは過不足ない情報が詰め込まれているのですが、それだけ設定が複雑な話であり、逆にロマンス部分に入り込みづらいというジレンマを抱える結果になってしまったのかしら、と、読み終わってから思います。

というのも、実は最後にかなり意外などんでん返しがあり、それこそがヒーローがヒロインとの恋愛に躊躇する理由でありロマンスの障害であるのですが、読者には伏せられているために「なんでこの男はここまでウジウジ思い悩んでるんだ!」とフラストレーションがたまるのです……。
いちおう、真の理由を隠すため「男は従軍取材で疲弊した(PTSD発症)」という設定もかぶせてあるのですが、PTSDになるに至った従軍中のショッキングな事件の詳細すら最後まで引っ張られているものだから、読者としてはなかなかヒーローに感情移入できず、読み進めるスピードが上がりませんでした。

が。そんな煮え切らなさも最後のどんでん返しまで。
そこまでくれば後は一気読みでした。隠されていた謎が次々明らかにされてカタルシス。そして、読了してから振り返れば、
「いくらサンドラでも、そんなネタで書こうとしたら、そりゃこうなるしかないよね」
という、上のような感想となるのでした。

さらに、この複雑な設定を成立させるためにあちこちでかなり強引なご都合主義を繰り出していて、そこも物語に入り込めない一因だったかと。
いくら腹をすかせた闘犬3頭でも、大の大人2人を跡形もなく食い尽くすことは無理だろう……。(それで死んだと見せかけて実は生きていたネタ。話の早い段階で明らかになるのでネタバレには含まれないと判断)

ま、ロマンス小説作家は多作なので、たまにはこういうこともあるよね。

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