ぼくには数字が風景に見える
2012年11月6日 読書記録第5紀(10.12~)著者ダニエルは、数学と語学の天才青年です。それは、ダニエルが映画『レインマン』の主人公と同じサヴァン症候群で、数字は彼にとって言葉と同じものだから。複雑な長い数式も、さまざまな色や形や手ざわりの数字が広がる美しい風景に感じられ、一瞬にして答えが見えるのです。ダニエルは、人とのコミュニケーションにハンディをもつアスペルガー症候群でもあります。けれども、家族や仲間の愛情に包まれ、一歩ずつ自立していきます。本書は、そんなダニエルがみずからの「頭と心の中」を描いた、驚きに満ち、そして心打たれる手記です。
アスペルガーやサヴァン、それから著者には共感覚もあるのですが、そういった脳機能の障害がありながら、自閉症が軽度である程度人とコミュニケーションが取れるため、自分がどう感じているかを説明できる、という稀有な人の自伝。
説明されても共感覚が理解できるわけではないですが、自分と同じものを見ながら違うように理解している人の感じ方を興味深く読みました。
でも、珠算(もしくは暗算)をやっていると、数字を珠の量や算盤の面として、もしくは指先の感覚として同時に理解する感覚はある程度分かる気がする。
ただ、それを訓練でなく脳の機能として処理できるところと、訓練で可能なレベルを超えているところは本当にすごい。
それと、自伝であるから、たとえば子どもの頃のいじめられた経験など、あまり深刻に書かれていないけれど、寂しかった・不安だった・というひと言にどれだけの感情が詰まっているのかと思うと、この本の文字だけ読んで理解しちゃいけないな、と思う。
そういう意味では、「夜中に犬に起こった奇妙な事件」のように、健常者がアスペルガーを見て感じるだろうことを伝えようとしている小説の方が、実際になにをどう感じているかを理解しやすいのかもしれない。
とはいえ、この本を読もうと思ったきっかけは、この著者がゲイでパートナーとらぶらぶだ、と聞いたからだ、っていうのは誰も聞いちゃいないんだから自己申告しなくてもいいと思います。>自分
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