コンゲーム小説を読もう週間第3弾くらい。

「世界でもっとも安全」な超高級マンションがニューヨークにオープンした。青年トニオは、周到な準備と大胆な発想でこのビルを”人質”にし、警備側の誰一人として予想もしていなかった要求をつきつける。さらに、脅迫した400万ドルの受け取り方法についても、まったく新しいアイデアを編み出した。異色でハードな最高の襲撃小説!(文庫裏書より)


グレート! マーベラス!!

細かいところまでよく練られている”襲撃”小説でした。
犯人の、大金を必要とする動機もコンパクトに説得力ある描写で納得させられる(400ページ中最初の36ページ目で!)けれども、彼がいかに自分が捕まらないように大金をせしめようとしているのかはまったく説明がないまま、彼の行動を一つ一つ読まされていくので、非常にシンプルかつ力強い骨格となっています。
そこへ、犯人の青年と偶然拾ってしまった少女との交流――青年の完璧な計画が、この少女のせいで破綻してしまうのではないか、という緊張感――という肉付けと、脅迫されているマンション+ホテルの支配人の、人間的な悩みとか個性的なその周囲の人びとの様子が肉付けとなって厚みを増しています。

とはいえ読者は青年が(例え計画の途中で人を殺したとしても)大金をせしめるのに成功して欲しいと思っているので、最後のどんでん返しは本当に意外。そして本当の最後の最後はしっかり満足して本を置くことができます。

いや〜気持ちのいいエンタテインメントでした。

やっぱりね。動機付けが大事だと思うのですよ。
今回は犯人視点だったけれど、たとえこれが警察側の視点だったとしても、犯人の動機が読者の納得できるものでないと、コンゲームの駆け引きの緊張感がなくなってしまう。

そして、えーっと、この本の犯人、双子の弟のこと好きすぎ(笑)。

ISBN:4167275074 文庫 リチャード・ジェサップ(訳・平尾 圭吾) 文芸春秋 1983/01 ¥571

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