公式サイト
http://www.panslabyrinth.jp/

1944年のスペイン内戦で父を亡くし、独裁主義の恐ろしい大尉と再婚してしまった母と暮らすオフェリア(イバナ・バケロ)は、この恐ろしい義父から逃れたいと願うばかり自分の中に新しい世界を創り出す。オフェリアが屋敷の近くに不思議な迷宮を見つけ出して足を踏み入れると、迷宮の守護神が現われ彼女に危険な試練を与える。


今日は午後美容院へ行くのに東京へ出る(苦笑)ため、ついでになにか映画を見たいと思いました。
本当は、今日の気分は「幸せのレシピ」だったんですが、でも「幸せの〜」ならわざわざ映画館で見なくても、DVDを借りて家でのんびり見ても充分楽しめるだろう、せっかく映画館で見るなら映像美にも力が入っているらしい、次点の「バンズ・ラビリンス」を見たいと思いました。ちょうど、美容院が終わる時間と移動時間を考えると夕方からの回に間に合いそうだし。

……映画紹介ではファンタジーと紹介されていますが、ハリポタやナルニアと思って行くと期待を裏切られること必至。しかも間違って子どもを連れて行っちゃった日には、トラウマ確実なダークな世界が広がっておりました。
もともと痛い描写には弱いのですが、思わずスクリーンから目をそむけること数度。いい人もどんどん死んでいくので、そういうのが苦手な方は要注意。

でも、見終わってから深い余韻の残る、素晴らしい映画でした。

以下、ネタバレの可能性大。要注意!!

ファンタジーと言っても、実際にファンタジーな、少女の抱く想像の世界の描写は少なく、肝心のCG描写も時間にしたら大変短い。パン神がほとんど動かないんだもんな〜。
その分現実世界のシーンが多いのですが、こちらがすごくて。最近見た映画で言えば「麦の穂を揺らす風」的。スペイン内乱の歴史がある程度予備知識としてあると余計に理解が深まると思いますが、なくても1944年という時代と、悪役の大尉が(ちょび髭こそないものの)誰かさんを髣髴とさせる雰囲気をかもし出しているので、非常に親切なつくりになってます。つまりファシズムであるフランコ政権と、それに抵抗するレジスタンス・ゲリラとの戦いが背景(というか前面)にあります。
また、スペインと言うと乾いた大地と真っ青な空、というイメージが強いですが、映画の中では山間部の森の中で、始終雨が降っているところから、スペイン北西部ガリシア地方なんじゃないかなぁと思ったり。まあこれは作品理解にそれほど重要ではないですが。
さらに、ギリシア神話のパンが、女好きでいたずら好きであまりよいイメージでないことも分かってたほうがよさそうですが、そこも親切に、主人公の少女のよき理解者である地元の女性が「パンには気をつけなさいといわれている」と警告してくれています。

冷酷な義父、その子を妊娠して弱っていく美しい母、自分の理解者はレジスタンスのスパイで、レジスタンスは冷酷な大尉によって拷問を受け、殺されていく。
そんな過酷な現実から逃れるために、少女は自分が地下の王国の王女の魂を受け継いだ者である、という想像の世界へ逃避するのですが、その道案内訳であるパンがまた怪しくて、「そんな奴信じるなよ!」と見ているほうはハラハラしっぱなし。パンは少女に「王女だと証明するためには3つの使命を果たさねばならない」と告げます。ちゃんとおとぎ話のセオリーに則ってるのがうれしい。また、2番目の使命に出てくる化け物がよくてなぁ。

一方現実世界の悪役、義父の大尉の冷酷さもすさまじいまでの描写で(涙)。でも、この大尉のコンプレックスを、間接的に、的確に描写しているので人間的な深みが出ていて大変よろしい。超絶イヤな奴ですが、カッコイイのだこれが。
軍服萌えな方にはぜひご覧いただきたい。なんでこの監督は軍服萌えのツボをよく分かっていらっしゃるのだろう……。

でも一番カッコイイのはレジスタンスのスパイ、メルセデス。

最後は悲劇が訪れるのだけれど、この悲劇は、本当に悲劇なのか、想像の世界ではハッピーエンドになるのではないか。
そんな、いろんなことを考えさせて幕を閉じます。

いや、よかったです。全然すっきりはしないんですが、いい映画をみました。

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