マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演での3度目の顔合わせは、香港映画の傑作『インファナル・アフェア』のリメイク。舞台をボストンに置き換えているが、基本のストーリーはオリジナルに忠実だ。犯罪者の家に生まれながら、まっとうに生きることを誓って警察官になり、マフィアへの潜入捜査を任されるビリー。一方…



試写会に当たったので観てきました。
香港映画「インファナル・アフェア」のハリウッド・リメーク。スコセッシ監督・ディカプリオ&デイモン主演。マフィアに潜入した覆面警官と、警察官になりすましたマフィアの“ネズミ”の物語。

わたしは「インファナル・アフェア」を好きで、ハリウッドといえどもリメークってどうもね……と思っていたのだけれど、意外とアメリカでの評判がよく、オスカー・ノミネートされても受賞したことのないスコセッシとディカプリオに悲願の受賞をもたらすか?とまで書かれているのを読んで、俄然気になりだした。

で、感想。
公開前ですが、ネタバレに準じる話になってしまったので、どんな予備知識も入れたくない方はこの先は見ないで下さい。

あ、でも未見の方に一言だけ。
「インファナル・アフェア」と見比べると、アメリカ人とアジア人とのメンタリティの違いがよく分かりますので、お薦め。


以下ネタバレ



前半はほとんどオリジナルで、「こりゃ、基本構造だけ借りてきてまったく新しい映画になっているのかしら?」と期待したものの、逆にどうしても「インファナル〜」と比較して見てしまうので話が掴みにくい感じ。そして後半の印象的な場面はほとんど「インファナル・アフェア」そのまま。つまり、「インファナル〜」の設定をボストンに移し替えるために、前提条件部分だけごっそり付け替えた印象。
とはいえ、その「アメリカ仕様に作り替えた部分」を「インファナル〜」と比較すると、アメリカ人のメンタリティが浮き彫りにされてとても興味深い。
たとえば、「インファナル〜」で印象的だった、大儀のために自分を偽らなければならない自分と、自分本来の価値観との齟齬に苦しむウェットな心情が、「ディパーテッド」では深く彫り込まれず、というか日本人である自分には共感を持って感じられず、かなりドライな印象。警察に潜入するデイモンの、マフィア組織への忠義が感じられないのであまり葛藤とか人生での目標が明確に感じられない。一方の、マフィアに潜入するディカプリオについても、警察で彼の本当の身分を知っている上司キャラを二人に分け、一方を毒舌にしていて、二人に分けたことも一方を毒舌にしたことも意味はあるのだけれど、毒舌にしてしまったことで、ディカプの組織への忠義心の印象が薄まってしまい、また潜入先のマフィアのボスもとても個性的で魅力的な悪漢なんだけれど、ディカプがその悪漢に対して人間的に惹かれる描写がなく、そこんところの「インファナル〜」にあった二律背反は描かれていない(と、日本人であるわたしには思える。)
ま、その辺はきっとキリスト原理主義的なアメリカ人には、「正義の味方であるはずの主人公がマフィアに忠義心を抱いていたり、ボスに人間的魅力を感じたりすることは容認できない」のだろうなぁと勝手に想像(偏見おおあり)。

一人を二人に分けている一方で、「インファナル〜」では二人の主人公それぞれに支える女性が出てきますが、「ディパーテッド」ではそれを一人の女性にまとめてしまっています。それによって二人の主人公の対立軸(互いが互いのポジ/ネガの関係である、みたいな)が明確になればよかったのですが、その点ではツッコミが甘かったような。
てか、一夫一婦制の家族制度を重視するアメリカにしては、この女性が二股掛けているように見えるのはおっけーだったのだろうか?

暴力描写に関しては、R-15指定で雑魚に対しては容赦ないんですが、「インファナル〜」でも強いインパクトを与える、覆面捜査官の保護者的な警察の上司が捜査官の目の前で車のボンネットにビルから墜落してくる場面。「ディパーテッド」では、直前に一瞬、落下途中の上司の姿が観客に提示される。やっぱり、お化け屋敷のようにいきなりショッキングなシーンが出てくるとまずいから心の準備が必要だったのか? それにしては血しぶきは派手だったけど。

「ディパーテッド」のオリジナルな冒頭として、ボストンのアイルランド系マフィアの歴史に触れていたり、古っぽい映像を流したりして、こういうハードな社会派映画にするつもりなのかと、それはそれで期待していたのだけれど、前述したとおり後半はオリジナルとほぼ一緒だしなぁ。

つまり、アジア人(のわたし)が「インファナル・アフェア」を見て面白いと思ったところと、アメリカ人が見て「面白い」と思ったところが違うんだろうな。
やっぱり育った文化の違いは計り知れないなぁ……。

ってか、アメリカで「ディパーテッド」をほめてる人って、「インファナル・アフェア」を見てるのかしら???

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