ぼくがヴァレリーに出会ったのは、十四歳のときだった。
赤く長い髪が美しいヴァレリーは金持ちの娘、ぼくは労働者の息子だったけれど、ぼくたちは惹かれあい、恋に落ちた。
はじめは彼女の家の庭で、やがて川沿いの道や、海辺の岬にある廃墟を散歩しながら、いっしょにさまざまなものを見、話をし、初めてのキスをした。
ほどなく戦争が始まり、町が爆撃を受けるようになっても、ぼくたちの上にはいつも、太陽が輝いているような気がした。
でも病弱なヴァレリーは、自分にあまり時間がないことを、知っていたのかもしれない。
だからぼくに、あんなことを言ったのだ。
「いつかわたしが迷子になったら、かならず見つけてね」そうするよ、とぼくは約束した。
それが、けっしてしてはならない約束だとは知らずに…。
イギリス児童文学の巨匠ウェストールが描く、せつなく、恐ろしく、忘れがたい初恋の物語。


勢いでアマゾった、徳間で出してるウェストール・コレクションの1冊。
もう、最初の10ページでジーンとして、60ページで泣きたくなった。切なく、終わりの予感を秘めた初恋の物語が、後半一変してホラーに(汗)。
いや、一変というのは違うかな。ヴァレリーのキャラは最初から最後まで一貫していて、ただ、立場というか姿形が違ってしまったために、切なさが恐ろしさに変わってしまう。その辺、心理描写に巧みな著者が丁寧に描いてます。
いい話や〜。ホント、このまま勢いでコレクション全8冊揃えちゃいそう。

ISBN:4198619743 単行本 野沢 佳織 徳間書店 2005/01 ¥1,470

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