書店で平積みになっていたのでてっきり新刊かと思ったら、初版は2001年でした。
最近の少年犯罪とか、しばらく前に流行った「平気でウソをつく人びと」などを見て、感じていたことがあっさり書かれてあって、いろいろ共感しながら読みました。
最近の、問題行動を起こす子どもとか、拒食・過食症とか買い物症候群とか、平気でウソをつく人たちというのは、本人が感じている/ストレスに思っていることとまったく違う部分で問題行動が生じているように感じます。つまり、「なんとなくムカつく」「もやもやする」というマイナス感情に向き合って、ちゃんと言葉で言い表すことができないから、それの正体も掴めずに、対処する――つまり扱うことができないんじゃないかと。だから、対症療法的に過食したり買い物したりしてもマイナス感情を昇華できずに溜まっていって、ある日キレてしまうんじゃないかと。
この本の筆者は、自分の気持ちに正面から向き合って、言葉にして誰かに話すべきだと言っています。そうして自分の気持ちを言葉にできれば、相手の話の中で言葉にされていない気持ちをも想像することができるだろう、と。そして、相手の気持ちを想像できれば、自分がどう答えてあげればいいのかも分かる。
たとえば、自分の子どもや友達から「どうせ私なんて……」なんて言われると、つい「そんなことないよ!」と答えたくなってしまうけれど、子どもにしたら、そんなことない、なんて大人が自分の問題を真剣に捉えずに、「誰にでもいいところはある」というたてまえ論で答えられているようにしか感じられず、不信感が芽生える。自分が「そんなことないよ!」と言われたときにどういう気持ちになるかをあらかじめ言葉にしておけば、同じように答えることはない。
という趣旨……かな。
とにかく、たとえが具体的で読んでいて「そうだよな」と思うことが多く、とかく目を逸らせがちな本音の部分に正面から取り組んでいる姿勢がいい。しかも、書かれている言葉は平易でわかりやすい。
ただ、たとえば上に例を挙げた「どうせ私なんて……」と子どもに言われたらどう答えるか、という設問に対して、明確な回答はもちろんない。状況と、相手の個性とによって答え方なんて何通りもあるし、同じ答え方である人にはよくても別の人にはカチンとくる、ということもありえるから。だからこの本は、模範回答集でなく、考え方の書かれた本なので、なにかこう、明快な結論が出るわけではない。

ISBN:4-08-720099-X 袰岩奈々 集英社新書 2004

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