■(読了)「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ、創元推理文庫
サーカスでボクシングの見世物をしていたカンガルーが、偶然ミドル級世界チャンピオンをノックアウトしてしまったことから、タイトルマッチをセッティングして本当に彼を世界チャンピオンにしようという機運が高まった。彼を使って金儲けをしようとする者、ピューリッツァ賞を狙う者、マチルダの活躍を阻止しようとする者などが入り乱れる。
先日読んだ「スクラッフィ」同様、一匹の獣の周りで人間たちが右往左往するのに、獣はあくまで獣として振舞っている。解説にもあるように、だから、この獣に何を見るかは、周りの人間を映す鏡になっている。
タイトルマッチへ向けての機運の高まりと、それが不意に大きく崩れていく意外性に、読み終わったあとでもまだ自分が動揺させられている気がする。それと、「誠実さ」が完全無欠の善ではないこと、だれもが、ちょっとした誠実さと、ちょっとしたずるさを併せ持っていることを思い知らされるなぁ。
いつまでも引きずられる不安定な終わり方には、好き嫌いが分かれるかもしれない。すっきりハッピーエンドでちょっとしみじみと読み終わりたいなら、「スクラッフィ」のほうがお勧め。
でも、お話のうねりの大きさではこっちが上かな、とも思う。

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