「青空の卵」
2002年6月20日■(読了)「青空の卵」坂木司、東京創元社、2002、¥1700
ひきこもりの青年・鳥井のもとへ、彼のたったひとりの親友・坂木が持ち込むさまざまな「日常の謎」を、鳥井は冷静な大人の理知と子どもの視線で説き明かす。連作。
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ひきこもりを題材にした安楽椅子探偵ものという設定は魅力的。だからこそこんなぬるい話にしないでほしかったなあ。
キャラクターの造型に奥行が感じられない。鳥井はひきこもりをするような性格に見えないし、あそこまで鳥井にのめりこむ坂木も、そういう「依存させているように見えてじつは依存しあう関係」としての記号にしか見えない。
事件も、日常のちょっとした謎から発してはいるけれど、その裏にはあまりに非日常的な理由があって、そこも現実感がとぼしくなっているところ。
事件に関わる登場人物たちも、謎解きの段階でしゃべるしゃべる。どの短篇でも最後は大告白大会になってしまって、謎解きのためだけのキャラクターに見えてしまう。
そして、それぞれの短篇で現代社会のトピック(女性問題、障害者問題、夫婦の危機など)を扱うんですが、それに対する主人公の見解が、あまりに通り一遍というか、いい子すぎるというか。
最初にひっかかったのが、この主人公、街中で見かけた盲目の青年に手を貸そうとするんですが、まず肩に触れてから声をかけるんです。わたしは晴眼者(目の見える人)ですし身近に視力障害のある人もいないので確かめようがないのですが、いきなり肩に手を掛けられたらびっくりするんじゃないだろうか。はじめに声をかけてから体に触れたほうが相手は安心するんじゃないかしら。それとも、目の見えない人は耳がさとくなるから、足音を聞いてだれかが後ろに立っていることに心構えができるのかな。
それをいったら、鳥井がひきこもりらしくない、と思うのも、現実のひきこもりの人を知らないからであって、ひきこもりの人って普通はこんな感じなのかしら。
なんだか消化不良感が拭えない。
けれど、もしこの話に続編が出来て、それがひきこもりの鳥井視線から語られて(本作は、友だちの坂木の一人称)、そうすることでじつは鳥井の存在に依存する坂木側の心の問題が浮き彫りになって、それによって逆にこの作品の奥行きのなさが説明されるような構造になったりしたら、すごーくかっこいいと思う。
ひきこもりの青年・鳥井のもとへ、彼のたったひとりの親友・坂木が持ち込むさまざまな「日常の謎」を、鳥井は冷静な大人の理知と子どもの視線で説き明かす。連作。
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ひきこもりを題材にした安楽椅子探偵ものという設定は魅力的。だからこそこんなぬるい話にしないでほしかったなあ。
キャラクターの造型に奥行が感じられない。鳥井はひきこもりをするような性格に見えないし、あそこまで鳥井にのめりこむ坂木も、そういう「依存させているように見えてじつは依存しあう関係」としての記号にしか見えない。
事件も、日常のちょっとした謎から発してはいるけれど、その裏にはあまりに非日常的な理由があって、そこも現実感がとぼしくなっているところ。
事件に関わる登場人物たちも、謎解きの段階でしゃべるしゃべる。どの短篇でも最後は大告白大会になってしまって、謎解きのためだけのキャラクターに見えてしまう。
そして、それぞれの短篇で現代社会のトピック(女性問題、障害者問題、夫婦の危機など)を扱うんですが、それに対する主人公の見解が、あまりに通り一遍というか、いい子すぎるというか。
最初にひっかかったのが、この主人公、街中で見かけた盲目の青年に手を貸そうとするんですが、まず肩に触れてから声をかけるんです。わたしは晴眼者(目の見える人)ですし身近に視力障害のある人もいないので確かめようがないのですが、いきなり肩に手を掛けられたらびっくりするんじゃないだろうか。はじめに声をかけてから体に触れたほうが相手は安心するんじゃないかしら。それとも、目の見えない人は耳がさとくなるから、足音を聞いてだれかが後ろに立っていることに心構えができるのかな。
それをいったら、鳥井がひきこもりらしくない、と思うのも、現実のひきこもりの人を知らないからであって、ひきこもりの人って普通はこんな感じなのかしら。
なんだか消化不良感が拭えない。
けれど、もしこの話に続編が出来て、それがひきこもりの鳥井視線から語られて(本作は、友だちの坂木の一人称)、そうすることでじつは鳥井の存在に依存する坂木側の心の問題が浮き彫りになって、それによって逆にこの作品の奥行きのなさが説明されるような構造になったりしたら、すごーくかっこいいと思う。
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