■(読了)「レイニー・シーズン」「オール・スマイル」榎田尤利、SHYノベルス(大洋図書)
前作「ソリッド・ラブ」で出来上がったサラリーマンカップルのその後。
おもしろいんだよなぁ。
BL小説というのは、カップルが出来上がるまでが話の読ませどころとして定着していて、人気が出ると続編が出るものの、続編以降は「横恋慕」「カミングアウト」「社会的立場の変化」等の問題でカップルに危機が訪れるが、それを乗り越える、というパターンを踏襲するしかなくなってしまう。この2冊でも、会社の後輩が主人公をねたんで仕事の足を引っ張ったり、彼が昔関係を持った人間の登場に気持ちが揺れたり、同僚が主人公に横恋慕したり、彼の昔の男が主人公を脅迫したために彼が身を引いたり、と、それぞれ見るとわりとありがちなシチュエーションだけれど、それらを二つ以上組み合わせて出してくるので話がダイナミックになる。
この著者ならではの脇役への目配りも行き届いていて、巧いなあ、と感心する。

じゃあ、この読後感の物足りなさはなんだろうと思うにつけ、もしかすると、わたしは榎田尤利に、無意識にとても高いレベルを求めているのかもしれない、と気づいた。
というのも、わたしが最初に榎田尤利の名前を知ったのは、まだ単行本が出るずっと前、ネット上のJUNE小説書評とかBBSとかで、たまにしか小説JUNE誌に載らない魚住くんシリーズへの絶賛でだったから。完全にウワサ先行でした。その後、著者のご友人が作っているサイトにコーナーが出来て、著者の習作の短編がいくつか載った。それらがすごくよかった(=えっちだった/苦笑)ので、わたしにとって榎田尤利という名は、ワープロ一発変換できない不思議な漢字とともに、なにかこう、憧れに彩られた伝説になってしまった感があります。
だから、普通のBL小説を書かれても納得しない。いつだって、すごいものを読ませてもらえるんじゃないかという期待で本を手に取るので、おのずと読後の感想が厳しくなってしまうのかも。



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