この本では、みなさんよくごぞんじの、ゆうめいな『白鳥の湖』をはじめ、バレエの名作を六つほどえらんで、そのすじがきを、できるだけくわしく、そして、おもしろい物語に書いてみました。この本をおよみになって、いままでより、いっそうバレエがすきになり、あなたのバレエの勉強にやくだててくださったら、たいへん、うれしいと思います。
(『読者のみなさんへ』より)


これこれ! 子どもの頃に読んでバレエの名作の知識が自然と身についていた。
いま考えるとセレクトがけっこう渋い?

「白鳥の湖」「ジゼル」「コッペリア」「火の鳥」「ペトルーシュカ」「眠れる森の美女」

「ジゼル」は主人公が愛する人のために身を犠牲にするところがすごく印象的だった。
「コッペリア」は、いま考えると普通に楽しい喜劇なんだろうけれど、子ども向けのハッピーエンドの話ばかり読んでいたので展開が意外で、何度も繰り返して読んだ覚えがある。
「火の鳥」は、読んだ記憶がない……。

ああ、懐かしいなぁ。

著者ダニエルは、数学と語学の天才青年です。それは、ダニエルが映画『レインマン』の主人公と同じサヴァン症候群で、数字は彼にとって言葉と同じものだから。複雑な長い数式も、さまざまな色や形や手ざわりの数字が広がる美しい風景に感じられ、一瞬にして答えが見えるのです。ダニエルは、人とのコミュニケーションにハンディをもつアスペルガー症候群でもあります。けれども、家族や仲間の愛情に包まれ、一歩ずつ自立していきます。本書は、そんなダニエルがみずからの「頭と心の中」を描いた、驚きに満ち、そして心打たれる手記です。


アスペルガーやサヴァン、それから著者には共感覚もあるのですが、そういった脳機能の障害がありながら、自閉症が軽度である程度人とコミュニケーションが取れるため、自分がどう感じているかを説明できる、という稀有な人の自伝。
説明されても共感覚が理解できるわけではないですが、自分と同じものを見ながら違うように理解している人の感じ方を興味深く読みました。

でも、珠算(もしくは暗算)をやっていると、数字を珠の量や算盤の面として、もしくは指先の感覚として同時に理解する感覚はある程度分かる気がする。
ただ、それを訓練でなく脳の機能として処理できるところと、訓練で可能なレベルを超えているところは本当にすごい。

それと、自伝であるから、たとえば子どもの頃のいじめられた経験など、あまり深刻に書かれていないけれど、寂しかった・不安だった・というひと言にどれだけの感情が詰まっているのかと思うと、この本の文字だけ読んで理解しちゃいけないな、と思う。
そういう意味では、「夜中に犬に起こった奇妙な事件」のように、健常者がアスペルガーを見て感じるだろうことを伝えようとしている小説の方が、実際になにをどう感じているかを理解しやすいのかもしれない。

とはいえ、この本を読もうと思ったきっかけは、この著者がゲイでパートナーとらぶらぶだ、と聞いたからだ、っていうのは誰も聞いちゃいないんだから自己申告しなくてもいいと思います。>自分

道化師*歌劇

2012年11月5日 つれづれ
これは鬼門といえましょう。
新しい同居人
今日から新しい同居人が増えました。
どっきどきです(笑)。
新しい同居人が明日いらっしゃるのです。

はー今晩は徹夜で掃除だわ~。

読了。
うむむ……。面白かったんだけど、(ネタばれのため反転)超常現象オチはいかがなものか。

でも、「風の影」から続けてこの「忘れられた本の墓場」シリーズは4部作となるそうなので、
取り合えず評価は保留。

それにしても、「風の影」との時代の前後関係がよくわかっていなくて、「この人、前の話に出てきた人だっけ?」と悩みながら読んでいたのはもったいなかったかも。
事前に再読すべきであったか。

『眺めのいい部屋』『ハワーズ・エンド』などで知られる巨匠ジェームズ・アイヴォリー監督が手掛けた文芸ドラマ。自殺した作家の伝記執筆のため遺族が暮らす南米ウルグアイを訪れた青年の存在が、彼らの間に波紋を投げ掛け、それぞれが人生の最終地点を問うさまを描く。出演は名優アンソニー・ホプキンス、『ユー・キャン・カウント・オン・ミー』のローラ・リニー、『アンチクライスト』のシャルロット・ゲンズブール、テレビドラマ「LOST」や『ラッシュアワー3』など国際的に活躍する真田広之ら実力派がそろう。
http://www.u-picc.com/saishu/


イギリス郊外の邸宅、フィレンツェのお屋敷ときて、穏やかな、豊かな自然に囲まれた(けれども閉塞した)世界は南米ウルグアイまで行かないといけなくなったのね。
とはいえ、うっそうと木々の生い茂るジャングルと、牧畜の営まれる草原の風景はうつくしい。
浮世離れした閉じた世界で、自殺した作家の不在が、残された家族の関係の中から浮かびあがる物語はとても想像力をかき立てる。

作家とその妻、愛人と娘、兄とその同性のパートナーという、一見いびつながらバランスが取れて穏やかだったろう暮らしが、作家が欠けたことでバランスを失い、けれども何とか維持していたところへ飛び込んでくる若い作家の研究者によって、再構築されて、出て行く者あり、入ってくるものあり、で新しいバランスを得る物語。

一番印象的だったのは、作家の死によってもっとも傷ついて頑なだった人物が、「何に傷ついたのか」を若い研究者に打ち明ける場面。
あまりにあっさりと描かれていたので。
ある意味あの部分が、作家の自殺と、伝記を書かれることを拒否する理由であって、この話のキモかと思うのだけれど、過剰な演出も何もなくあっさりと、他と同じ一場面であるというように描かれているのが、逆に新鮮だった。

それと並行して描かれる、研究者と作家の愛人との心の交流の方が演出に力が入っていたけれど。

というか、この映画中唯一のヌードが真田広之ってどうよ?
(いつものワタシ節になった/笑)
しかもなんかきれいに撮ってもらえてていいわね!
さらになんかすごく可愛らしく演技つけられてるですけど!!
監督には、真田広之がそういう風に見えているのね……。
(以前読んだインタビューによると、監督は、この役はぜひサナダにやってもらいたいと、
 原作ではタイ人という設定だったのにあえて日本人にしたそうだ。)
それはさておき、さすがに乗馬姿が様になっていました真田広之。

そんな訳でホプキンスの若い恋人である真田広之を観に行ったのだけれど(←やっぱりね)
もっと驚いたのはシャルロット・ゲンズブール!!
先月行った美容院で、ELLEだったかの雑誌で読んだ短いインタビューで
たしか40歳くらいだったと記憶していたのだけれど
この映画では28歳の役をやっていて、それがゼンゼン違和感がないくらい可愛らしかった。
まあ、多少は「南米の強い日差しに当たって肌の老化が進んじゃったのね」という気はしたけれど
すごく可愛い……ああいうアラフォーになりたい……。





感想は後ほど……。

や、でも面白かったよ!!
お金の誘惑に負けて怪しげな女に頼まれた夫捜しを始めた中年女性が、複雑極まりない家族関係を目の当たりにして混乱しながらも、やがて自らの人生をも見つめ直していく姿をユーモアを織り交ぜ描いた人間ドラマ。監督は「マドンナのスーザンを探して」のスーザン・シーデルマン。主演は「夫たち、妻たち」のジュディ・デイヴィス。他に「スペース カウボーイ」のマーシャ・ゲイ・ハーデン、「ハイ・フィデリティ」のリリ・テイラー、「誘拐犯」のジュリエット・ルイスといった実力派女優が出演。(allcinema)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=239187


バルセロナを舞台にした、なんとも不思議な印象の物語。
誰もがひとくせあるキャラクタで、いろんなものが次々にひっくり返って異なる様相を示していって、主人公が翻弄される。
アメリカ・スペイン合作映画で、ガウディの摩訶不思議な建物やバルセロナのうつくしい街角を観光フィルムらしく(わざとらしく/笑)に映し出していくのと、主演女優4人がみなハリウッド系の人たちなのがアメリカ映画的で、トランスセクシャルな人が出てくるところがスペイン的か。(スペイン人め……けしからんもっとやれ/笑)
どうやら原作があるみたい。特典映像の監督インタビューでそう言っていた。

女優さん4人はみんな個性的でよかった。
こんなところで、私がいつも気に掛けているジュリエット・ルイスが見られるとは思わなかった……。
ギルバート・グレイプのころからずいぶん雰囲気も変わっているのに、「あーなにか引っかかる」と思ったらやっぱりこの人だった(笑)。
かわいいなぁ。
他の作業をしながら吹替えで流し見していたら、そのうちの1人の声が高山みなみで、それだけでもうこのキャラクタだけアニメにしか見えなかった。残念。

そもそも、バルセロナを舞台にしたドラマにはまっていたときに「バルセロナの風景が見たい!」と思ってチェックしていて、たまたまBookOffで出物があったので購入した。バルセロナの風景を堪能するのにもいい映画でした。

ダイドー・トワイト・サガの第1巻「ウィロビー・チェースのおおかみ」は映画化されている。
まあ、子ども向けだけどね。

今年は「ウィロビー・チェースのおおかみ」が刊行されて50周年ということで、英米では記念の新装刊が発行されている。
著者の娘による朗読CDも出たので、密林でぽちっとしてきました。

ワシントン・ポストでも記事になってるし!

‘The Wolves of Willoughby Chase’ 50th anniversary edition, by Joan Aiken
http://www.washingtonpost.com/entertainment/books/the-wolves-of-willoughby-chase-50th-anniversary-edition-by-joan-aiken/2012/10/10/bed2b9ae-0eff-11e2-bb5e-492c0d30bff6_story.html

もっと日本でも人気出ていいと思うんだけどな~。
私の愛する児童文学ダイドー・トワイト・サガ、英米ではWolves Cronicleと呼ばれているそうだが、5巻まで出たところで翻訳が止まっていたのだけれど、数年前から新訳で出しなおしされ始めた。
出し直しの順序はランダムなのだけれど、第6巻目にあたる今回初翻訳のこの本、4年前に出ていたもののようやく手に取りました。
(ホントに愛してるの?/汗)

成長したダイドーはバターシー公爵となったサイモンと再会。 喜びもつかの間、またもや父が仕える
辺境伯の悪だくみに巻き込まれていきます。
トンネルの開通式に仕組まれた計画とは?果たして王の運命は?胸おどる歴史冒険物語。
「この物語は 『ウィロビー・チェースのオオカミ』 からはじまるシリーズの一冊ですが、作者は
このシリーズのどの物語も独立したお話として楽しめるように書いています。


内容を補足すると、このシリーズは19世紀イギリスが舞台。とはいえ、ハノーヴァー朝(今の王家に連なる)に移行せず、スコットランドの流れを汲むスチュアート朝が続いている、というパラレルな設定。
ハノーヴァーの王子とその一派は、イギリス王位に着くために今の王様を亡き者にしようとあれやこれやと悪巧みを企みます。
されに、すでに英仏海峡トンネルが開通していてイギリスは大陸と地続きになり、冬になると大陸からオオカミの群れがイギリスまで渡ってくる、という背景。

ハノーヴァー党の悪巧みも荒唐無稽(お城の下にキャタピラを仕込んでテムズ川へ落とすとか)ならダイドーたちの活躍もさらにそれを上回って、とても楽しい冒険譚です。スチームパンク好きならきっと気に入る。
そのくせ、かなりシビアなストーリー展開もあって、ゴシックホラー的な要素もある。
まあつまり、ラノベ好きには絶対に受ける!と自信を持ってお薦めするのだけれど、ネットの片隅でどれだけ絶賛してもなかなか読者が増えなくてねぇ(涙)。

特に、1冊前の第5巻では、サイモンとダイドーの関係が今後どう進んでいくのか非常に楽しみな終わり方をしていた上に、この第6巻では二人が結婚しそうな予言までされてる(いわゆる「フラグが立つ」?)のに、ダイドーったら「お友だちでいましょうね」って……。
気になって仕方がないじゃないかーーー!

というわけで、続刊の翻訳切に希望。
お見合い
写真の彼とお見合いしてきました。

うむ。



うむうむ。



うーむ……



(写真が出てきてないですね。重すぎたかしら?)

軽い写真に差し替えました。こっち向いてないけど。
1917年、バルセロナ。17歳のダビッドは、雑用係を務めていた新聞社から、短篇を書くチャンスを与えられた。1年後、独立したダビッドは、旧市街の“塔の館”に移り住み、執筆活動を続ける。ある日、謎の編集人から、1年間彼のために執筆するかわりに、高額の報酬と“望むもの”を与えるというオファーを受ける。世界的ベストセラー『風の影』に続いて“忘れられた本の墓場”が登場する第2弾。


大好きで再読もしている「風の影」の続編が出ていることに2か月遅れで気がついて、慌てて読み始めました。
ようやく上巻を読了したものの、うっかり図書館で借りてしまった本の返却期限が迫っているので、いったん休止。
念のため、記録に残しておきます。

羽生が逆転V、4回転2種類決める…フィギュア

 フィギュアスケートのフィンランディア・トロフィーは6日、フィンランドのエスポーで男子フリーが行われ、昨季世界選手権3位の羽生結弦(宮城・東北高)が172・56点をマークして1位となり、合計248・13点とし、ショートプログラム(SP)2位から逆転で優勝を果たした。

 羽生はフリーで4回転ジャンプをトーループ、サルコーの2種類で決めた。

 中村健人(立大)は合計187・42点で7位だった。


2種4回転飛んだ上に3A2つとも成功させて、すごい!オーサーのところへ行った成果がもう!!
……って思ったのに。

Finlandia Trophy 05 10 2012 (8:52)
ttps://www.youtube.com/watch?v=ucbmZDKrYSw
(最初のhを抜いています。念のため)

リンクを降りるまでが演技です。

そして、コーチが変わろうともぷーはぷー。
まさかオーサーに持たせるとは……(冷汗)。


けんとくん、SPでの出遅れが響いたけどFS4位じゃない!
と、思ったものの、点数を見たら3位のなんですくんより20点以上低いです(涙目)。
でも4位は4位。がんばって!
この数年、この時期にたまアリに通っていたのになぁ。
そして、「バトル来日時には必ず1度は生で観る!」という自分ノルマを初めて破る。

【追記】
結果が出てました!
男子:http://www.jsfresults.com/InterNational/2012-2013/mwo/data0190.htm
女子:http://www.jsfresults.com/InterNational/2012-2013/mwo/data0290.htm
毎年この時期にやっているラテンビート映画祭。
スペイン・ポルトガル・南米の映画を紹介するもので、例年、何気なく萌えの混じる映画やさりげなくテディ賞受賞作(ベルリン国際映画祭でLGBT映画に対して与えられる)がかかるのでチェックしている。
今年は、テディ賞受賞作は南米の男娼世界を取り上げた短編ということで萌え心は刺激されませんでしたが、
ロボット・アンドロイド萌え心が「これはみておいた方がいいのでは?」と囁いたので、
この映画を見てきました。

http://www.hispanicbeatfilmfestival.com/lbff2012/eva.html

舞台は近未来の2041年。エンジニアのアレックスは、雪に閉ざされたサンタイレーネのロボット研究所に10年ぶりに戻り、少年のロボットの製作にとりかかる。

一方、かつての恋人ラナは、兄デダビッドと結婚。一人娘エヴァを授かっていた。エヴァの個性にひかれたアレックスは、彼女をモデルにロボットを作りたいと願うが…。

主演アレックスを演じるのは『グッバイ、レーニン!』『セブン・デイズ・イン・ハバナ』など世界各国の話題作に出演しているダニエル・ブリュール。兄ダビッドには『プリズン211』の演技派アルベルト・アンマン。2012年ゴヤ賞ではキケ・マイジョ監督が新人監督賞、名優ルイス・オマールが助演男優賞を受賞している。


なんというか由緒正しい70年代SFの雰囲気。
2041年設定といっても、人々の生活は基本的に今と同じかクラシカルで、ただロボット工学だけが発達している。ロボット研究所内では、動物を模したロボットや上半身だけのアンドロイドなど、普通にロボットが闊歩しているけれど、街中にはほとんど出くわさない。

ロボットの製作、といっても、主人公がやっているのは人工知能のデザインで、プログラミング方法はヴァーチャルに空間に浮かんで見えるガラスのシャンデリアのようなものの、ガラス玉を組み替えたり新たに追加したりすることで処理されている。その描写は美しかった。

美しいといえば、いちおうスペイン映画なんだけれども全編雪に閉ざされた谷あいの小さな街が舞台で、凍った湖でスケートをするシーンまであって驚いた。その辺も、異世界感をかもし出していてよかったかも。

ストーリーはとても古風。新しいのはロボットやプログラミングの描写。
主人公を翻弄する個性的な少女はなかなかよい。ロリータは見ていないけれど、シベールの日曜日も見ていないけれど、もしかしたらベニスに死すっぽいのかもしれないけれど、そんな感じ。
あんまり美少女過ぎないのもよい。

で。
ストーリーには全然絡んでこないけれど、主人公の元に大学から派遣されるお手伝いロボットが中年男性タイプで、家事・料理は万能でユーモアもあり主人にあくまで忠実、って執事萌えにはたまらない感じ? 1か所ドキッとするシーンがあって、客席でちらほら「クスッ」という笑い声やちょっと動揺した声が漏れていた。
ちなみに、上の作品紹介に出てくるゴヤ賞(スペインのアカデミー賞)助演男優賞取ったのは、この執事ロボット役の男優さんです。

そういや、主演のダニエル・ブリュールってドイツ人じゃなかったっけ? ずいぶん流暢にスペイン語話してるなぁと思ったら、母親がスペイン(カタルーニャ)人なのね~。

映画祭はこの後、横浜・大阪・神戸・博多を巡回しますが、EVAは各地で1回のみの上映です。
関心のある方はお見逃しなく。
絶版なので、BookOffのオトナ買いで長らく張っていたマンガ。
一度はどこかの誰かに先を越されて悔し涙に暮れましたが、ようやく落手いたしました。

感想は、またあらためて。1度読んだきりでは話が複雑すぎて。

でも、あとがきに書かれていたこの一言は自分メモとして残しておきます。

「動機は執着。愛で解決」

ウス。
アスペルガー×育児マンガ。

笑った!
※BL注意

木原音瀬作品は、読むのにふさわしくない精神状態、というのがある。
人の気持ちを抉るように書くので、それに耐えられなさそうなときには手に取るのも気が重い。
かてて加えて最近はBL波の来るのが間遠なので、ノベルスでこの本が出たとき、
いい噂ばかり聞いていたし、読もう読もうと何度も書店で手にとってもそのまま置くことが重なって
そのうち時機を逸してしまっていた。

が、今回講談社文庫に入るという。
ようやく買ってみる気になった。

痴漢の冤罪で実刑判決を受けた堂野。収監されたくせ者ばかりの雑居房で人間不信極まった堂野は、同部屋の喜多川の無垢な優しさに救われる。それは母親に請われるまま殺人犯として服役する喜多川の、生まれて初めての「愛情」だった。『箱の中』に加え、二人の出所後を描いた『檻の外』表題作を収録した決定版。


読み始めれば一気読み。
一般人だった主人公が、陥れられ騙され尊厳を剥ぎ取られて落ちきったところで向けられた好意に、傾きつつもあくまで常識が踏みとどまらせるあたりは生々しいリアリティを感じる。
結局、ごくまっとうな主人公に「普通じゃない」安らぎを掴ませるためには、あそこまで突き落とす必要があったのだろう。
とは思うものの、個人的なラノベ・BLの倫理ラインからはちょっとやりすぎた感がなきにしもあらず。
でも、感じ方は人それぞれなので、否定するわけじゃない。

攻めの造型は、読む前はもっと意識的に罪を犯した人間かと思っていたので、悲惨な子ども時代のせいで体は大人だけれど精神的には子ども、というところが、肩透かしでもあり安心して読めたところでもあり。初期の作品の「こどもの瞳」(攻めは精神後退した兄)を思い出した。
安心しては読めたけれど、木原音瀬には、もっときっつく攻めて欲しかった気もあり。
むー。

……あれ、なんか否定的な感想しか書いてない?
いや、おもしろかったんです!でも木原音瀬がおもしろいのはデフォルトだから!!

秋林さんも書かれているし解説でなんとかしをんさんも書いているけれど、
文庫にはシリーズ最後の番外編に当たる短編が収録されていないとのこと。
ノベルスも買わせて最初の出版社にもお金が入るようにという心遣いですね。
わかりました。浄財として払わせていただきます(涙)。

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